マイクロプラスチックの回収・処理情報について

マイクロプラスチックの回収処理方法について

 

 

  21世紀に入り、生産量が激増しているプラスチック。便利さの一方で、大量のプラスチックが海に流出し続け、近年は5mm以下の「マイクロプラスチック」にも大きな注目が集まっている。

 

 東京農工大学農学部環境資源科学科の水環境保全学/有機地球化学研究室が、2015年、東京湾の埠頭で釣ったカタクチイワシを調べたところ、8割の消化管の中から、様々なプラスチック片が出てきたというのである。

 

 同大学の高田秀重教授は「海に浮いているゴミって、大きいうちは砂浜に打ち上げられる法則があるんです。そして、小さくなると、今度は沖合に出て行きます。専門的には、ストークスドリフトって言います。つまり、大きい破片が砂浜に打ち上げられて、そこでボロボロになって小さくなると、今度は海に戻っていくわけです。小さくなって海に行ってしまうともう回収するのはほとんど不可能です。プランクトンネットで海じゅうをすくわなければならなくなりますから」と述べている。

マイクロプラスチックの回収の難しさから、

 

・マテリアルリサイクル:廃プラを原材料としてプラスチック製品に再生

・ケミカルリサイクル:廃プラを化学的に分解するなどして、化学原料に再生

・サーマルリサイクル:廃プラを固形燃料にしたり、焼却して熱エネルギーを回収

 

の廃プラの3つのリサイクルの重要性を訴えている。

 そして、多くの科学者も同様にマイクロプラスチックの捕集の困難さを訴えている。

 

 日本では廃棄されるプラスチック(廃プラ)の有効利用率が84%と特に進んでいるとされているが、全体の57.5%は、燃焼の際にエネルギー回収をする、燃やす「サーマルリサイクル」という処理方法に頼っている。これはつまり、化石燃料を燃やし、CO2排出しているということであるので、今後ますます深刻化する地球温暖化への対策まで含めた視点で見たときに、とても資源が有効かつ持続可能な方法で利用されているとは言えないとの批判がなされている。COP25では2050年以降の石油ベースのプラスチックの焼却が禁止されているので、マテリアルリサイクルの技術をさらに高める必要があると考える。

 

 ともあれ、2050年には海洋プラスチックゴミは魚の量を上回り、消費する原油の20%がプラスチック生産に使用されると予測されている。SDGs の観点からもゆゆしき問題である。そして早急に世界中の海にある約50兆億個もあるマイクロプラスチックの回収処理方法を早急に確立しなければ大変なことになる。

 

 そこで、捕集方法として私の、2020.1.4の「温排水の利用で地球温暖化対策を」で述べた、温排水の海水を撹拌してCO2を湧出する際に発生する「泡」に注目していただきたいのである。泡は不純物があるから発生するのであるが、その不純物の大部分はマイクロプラスチックである。この泡を回収(捕集)することでマイクロプラスチックを回収するのである。

 次に、同ブログでは、CO2回収後温排水(若干温度が下がっている)を電気分解し、酸素と水素を分離することで水分を少なくする。言い換えれば塩分濃度の濃い海水にしてから、海洋に戻すとしている。海水絶対量の削減の提案であるが、問題はこの電気分解にある。

 

 仮に1万ボルト以上の高圧で電気分解すると思うが、極板に腐食しにくい白金を使用しても、陽極板に不純物が付着して、電気分解のスピードが落ちてしまうからである。なぜなら、電気はマイナス極から海水中を通してプラス極に流れる。この時マイクロプラスチックが帯電してプラス極に付着してしまうからである。いわば電気集じん機と同じ原理である。

 したがって、電気分解の効率が下がれば、極板を海水から露出させ、付着物であるマイクロプラスチックを定期的に回収することを考えなければならない。

 

 泡と電気分解により回収されたマイクロプラスチックであるが、これはPCBなどの有害物質も付着しておりマテリアルリサイクルをするにしても、多大な費用がかかると考えられる。

 だから、現在のところ、火力発電所の燃料である石油や石炭と一緒に燃焼させるしかないと考えられる。CO2の削減に逆行するが、温排水からCO2を抽出しておりこちらの量が火力発電で発生させるCO2の量より圧倒的に多いはずなので、2050年まではやむを得ない措置として容認されるのではないかと考えられる。

 

 さて、マイクロプラスチックの回収処理方法の概要は以上述べたとおりであるが、より効果的にマイクロプラスチックを捕集するためには、現行の冷却用海水の取水方法を変更する必要がある。

 現行は、温度差による冷却効果とできるだけきれいな海水を取り込むことで、冷却用配管等の保守点検がしやすいということもあり、取水口は多くは陸上の岸からかなり離れた、割と深い位置に設けられているところが多い。

 しかし、特に微細なマイクロプラスチックほど海表面近くに漂っている。従って、取水口は、潮位の変化を見越して、海面および海面下2mぐらいまでの海水を取り込むようにすべきである。滝のように、あるいは「じょうろ」のように海水を取り込むのである。

 その際、取水口は台風、地震津波の脅威に十分耐えられるよう設計されねばならないことは当然である。取水口に設置された魚や粗大ゴミ等の流入を防ぐ効果的なフィルターの開発と簡単な交換方法などもクリアしなければならない問題であろう。

 

 さらに電気分解にも工夫が必要である。実証実験を行い、何万ボルトなら良いのか、その時の陽極と陰極の適正距離はなどを見極める必要がある。また電気分解槽は高圧電力が使用されるが、漏電や周辺への影響を考えると硝子製あるいは碍子に用いられる陶器製のものを使用するものと思われる。大きなビーカー状のものであるが、今の産業技術でどれほど大きなものが製造できるか現在私はその知識を持ち合わせていない。が日本の技術力を信じたいと思っている。「できない」ではなく「どうすればできるか」というチャレンジ精神である。

 

結論

 世界中からCOP25の精神に反するといわれている火力発電所とその建設であるが、科学技術の革新により燃焼ガスから今以上のCO2の排出削減を目指すとともに、目の敵にされているボイラー蒸気の冷却のために強制的に海水を取り込んで生じる温排水からのCO2抽出、マイクロプラスチックの回収、そして海水そのものの削減と水素社会推進の拡大に寄与するなら、再生可能エネルギーとの当面の共存も許されるのではないか、私はそう思う。


 それから世界の各地の火力発電所等の冷却水は、海ではなく河川や湖沼のところがある。しかし、河川にも湖沼にも大量のCO2が含まれマイクロプラスチックが含まれていることは、多数の文献で明らかである。これらの発電所でも同様の対策を講じることが重要であると考える。

 決して、政府の火力発電所建設の輸出を全面的に認めるわけではないが、世界中で現に稼働している原子力発電所、火力発電所に対して、CO2削減、マイクロプラスチック回収の技術を輸出することはSDGsの実現に少しでも寄与することになると考える。

 

2020年2月4日

 

白﨑淳一郎のBulog