法務省、重任登記の一部解釈変更の回答を行う

法務省、「役員の任期満了前の任期の延長には変更登記が必要ない」と重任登記の一部を否定する回答を行う

 

 

2020年10月18日に記1のとおりの11項目の質問を行いました。主な質問内容は重任登記に関係することです。重任登記とは法務省ホームページのQ&Aでは「取締役が任期満了により退任し、時間的間隔を置かずに取締役に再任されたような場合(登記実務上「重任」といいます。)にも、変更の登記が必要となります(会社法第915条第1項)。この役員変更登記については、本店所在地において2週間以内に行わなければ、登記懈怠となり、過料に処せられる可能性があります(会社法第976条第1号)。」との説明・記載があります。この考え方は一般社団法人法にも適用されるとして、私が過料請求を受けたことはすでに既報(2020.3.8)のとおりです。

 問題は社員総会で任期の延長ができるかということと任期満了が何時なのか、を明らかにすることでした。任期満了前に株主総会や社員総会で役員の任期の延長を決議すれば、重任登記が必要とならなくなるからです。

私の質問に対し法務省は2020年11月5日に記2のとおり5項目で回答をしました。

回答内容が不十分で曖昧なので、2020年11月11日に記3として再度5項目の再質問を今回はFAXで行いました。

ただし、今回(2020.11.5)の法務省の回答に、「役員の任期の満了前の任期の延長には変更登記が必要ない」と回答があったことは非常に重要だと考えています。

 今回も長い文書であり大変申し訳ありません。しかしながら、法務省の重任登記の不当性を明らかにするには、裁判所の私への勝利決定があったこの時期しかない、コロナ禍で苦しんでいる中小零細企業を少しでも応援するということなので、お許し下さい。

 

 

記1 法務省に対する公開質問(2020.1018)

 

1.一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「法律」という。)第35条第1項では社員総会は一般社団法人(以下「法人」という。)に関する一切の事項について決議をすることができると規定しています。また第63条では社員総会で役員を選任する、とも規定しています。これらの規定からすると、一切の事項に、役員や理事の2年以内なら新たな任期や任期の延長を定めることも含めても違法ではありませんね。ただしこの法人には第63条第2項の理事会が設置されていないものとします。違法ならその理由と根拠条文を示してください。

 

2.法律第66条の見出しは(理事の任期)となっていますが、当該条文では「理事の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとする。」と規定しています。ここでいう「定時社員総会の終結の時」とは一般的には、社員総会の議長が「これで社員総会を閉会します。」と宣言したときと判断されます。

その場合、定時社員総会終結前に理事の任期を再任ではなく2年以内の定時社員総会終結の時までと延長した場合は、その時点まで任期は延長できませんか。延長できないとしたらその根拠条文、理由を示してください。

 理解しやすくするため具体的例を示します。ある一般社団法人の定款は毎年5月に定時社員総会を開催すると定めています。その設立社員総会で役員の任期を選任のときより2年以内に開催する定時社員総会終結時までとすると定めていたのですが、定款の定めにより任期途中の翌年の1年目の定時社員総会で役員の任期を、本日から2年以内の定時社員総会終結の時まで延長する、と定めても違法ではありませんね。違法とするならその根拠と理由を述べてください。

 

3.法律第66条では理事の任期は選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとする、と規定しています。一般に社員総会終結後に改めて社員総会を開催して理事の再任(重任)という裁決をするということは現実としてあり得ません。となると定時社員総会終結前、つまり定時社員総会開催中は理事の任期はまだ満了していません。任期が満了していない理事に対して任期の延長を決議することは仮に再任と称しても、法的には単なる任期の延長であって任期満了による退任後の再任とは言わないはずです。

しかし定時社員総会終了後、あるいは定時社員総会を開催しないまま2年以上経過した場合は、任期が満了したことになるので退任したものとして取り扱われ、その場合は再任となり変更登記の対象になるかも知れません。

 ちなみに広辞苑では再任は「再び前の官職に任ぜられること。」、延長は「長く伸びること。長く伸ばすこと。」という説明です。延長には任期満了による退任という法的行為がないと考えます。

 定時社員総会での任期の延長を認めますか。認めないとしたらその根拠条文と理由を述べてください。

 

4.商法では「(任期)第256条 取締役ノ任期ハ2年ヲ超ユルコトヲ得ズ。」と規定され、同第2項では定款に規定することによって、任期中の最終の決算期に関する定時株主総会終結の時まで任期を伸長することができる、とされていました。つまり原則は法定2年で例外として定款で定時株主総会終結時まで伸長できるとされていました。

しかし平成17年に会社法が制定されることにより商法第256条は削除され、この原則と例外が逆転して規定されることになりました。

私は改正の理由は、明治時代のお上が法律ですべて決め・管理するという考え方から、企業の自主的・民主的統治(ガバナンス)を認めるという立場に立ったからではないかと思っています。つまり会社法第332条は商法第256条第1項2項と思想的に大きく異なったものになったと思います。平成18年に「法律」が制定されたときも同じ思想で法律第66条が策定されたと聞いています。

 言い換えれば従来は法令で任期を2年と定めたのに対して、法律第66条では2年以内に開催される定時社員総会までとなったのです。なぜなら企業の最高議決機関の社員総会のインターバルを法律上定めていないので、あまり長期にわたり社員総会を開催しないことは望ましいことではないので、選任後2年以内に開催することを命じたのだと考えられます。その2年が正当か否かは8でもう一度質問します。

 選任後2年以内に開催される社員総会の終結の前に理事の任期をさらに2年延長すると決議しても商法の精神は変更されていますので、法令違反とはなりませんね。仮に法令違反となるならその理由と根拠序文を示してください。

 

5.法務省ホームページのQ&Aの重任登記について質問します。同回答では「取締役が任期満了により退任し、時間的間隔を置かずに取締役に再任された場合(登記実務上「重任」といいます。)にも、変更の登記が必要となります。」との説明ですが、株主総会や社員総会で終結前はまだ任期は満了していませんね。つまり退任はしていませんね。そこで任期満了前に、役取締役の任期を延長の決議をした場合、任期満了は新たに決議された時点まで延長されることにはならないのですか?ならないとしたらその根拠条文を示してください。また同回答では「任期満了で退任し、時間的間隔を置かずに再任される、というパターンしか想定していませんが、任期満了前に退任せず、単に任期を延長する場合は「再任」とせず「任期延長」というパターンを認めませんか。

 

6.同Q&Aの回答にはさらに「この役員変更登記については、本店所在地において2週間以内に行わなければ、登記懈怠となり、過料に処せられる可能性があります。」と記載しています。まず会社法911条第3項第13号は取締役の氏名の変更です。「法律」では第301条第2項第5号で理事の氏名の変更があったら、2週間以内に変更の登記をするとしています。任期の変更については法律第301条第2項各号には規定がありません。

定時社員総会で退任・再任ではなく任期の延長なら氏名の変更はないので変更登記は必要ありませんね。退任・再任ではないのに登記が必要であるならその理由と根拠条文を示してください。

 

7.2の具体例に関して同様のケースがあり、さいたま地方裁判所越谷支部で2020年8月19日に、「 理事の任期満了前に、社員総会において同人について理事再任の手続が行われたことが認められ、本件の役員選任義務懈怠の事実は認められない。」として過料決定の取り消しが行われています。重任登記をしなくても定時社員総会終結前(任期満了前)に適切に理事の任期を延長すれば、役員選任の懈怠はないとしています。重任登記はあえて必要ないと裁判所は判断しました。この裁判所の判断からしても法務省のQ&Aを見直しませんか。見直さない場合にはその理由を述べて下さい。

 

8.会社法第332条第2項では、公開会社でないでない株式会社は定款で取締役の任期を選任後10年以内の定時株主総会終結時まで伸長することができると定めています。一般社団法人は非公開、非上場の株式会社とはどう違うのでしょうか。なぜ「法律」第66条にも同様の規定を設けなかったのでしょうか。その理由を示すとともに今後の方針、考え方を示してください。

 

9.法律第149条の見なし休眠は5年間です。一方、会社法第472条では12年です。この違いの理由を述べてください。任期や休眠期間で会社法と「法律」が異なる理由、公平性、平等性を無視した取扱いを行った理由を明確に述べてください。また今後の見直しの予定があれば述べて下さい。

 

10.「法律」第66条の理事の任期に係わって、理事の氏名の変更がないのに任期満了とみなす重任登記が何故必要なのでしょうか。その必要性を示してください。仮に商取引の安全のため、というなら何故、法務局が自ら解任した(未選任の状態にある)ものとみなして商取引の安全性を壊す必要があるのでしょうか。そのために法律第75条の役員等に欠員が生じた場合の措置の規定がある、とでもいうのでしょうか。この法律第75条の規定は実際に死亡、退任等で実際に欠員になったときの措置規定で、重任登記をしていないため法的に未選任にさせられた場合は含まないと解されています。

 また休眠しているかも知れないかどうかの確認のため重任登記を行うとでもいうのでしょうか。その場合は第149条の休眠していない旨の届出で確認できればそれでよいのではありませんか。定時社員総会終結前に、つまりまだ理事の任期が残存しているときに再任されたとしても、それは任期の延長のことであり、あえて任期満了で退任、改めて新たに就任=氏名の変更があったとして変更登記を求める必要性が「取引の安全上」どこにあるのでしょうか。無駄なことだと思いませんか。任期が残存中に再任された場合は任期の延長とみなして重任登記は必要ないとすべきではありませんか。できないならその理由と根拠条文を示してください。

 

11.菅内閣行政改革規制緩和を大目標としています。国内法人の99.5%が中小零細企業で、その多くは親族等固定された役員で構成されているという実態の中で、新型コロナ禍で苦しんでいる企業も多いという状況です。一般社団法人の場合2年に1回、2万円プラス消費税と登記手続のための印鑑証明書添付という重任登記を義務付けられています。しかも忙しいこともあり煩雑でもあるので、その多くは司法書士等の代理人に手続料(1万円プラス消費税)を支払って行っています。印鑑の廃止も重要ですが、明治時代以来の無駄な行為、悪慣習である重任登記の廃止についても真剣に検討を求めます。

 

以上ですが、この質問及び法務局からの行われるであろう回答は、私のブログ及びフェイスブックに掲載致しますので念のため申し添えます。なお、さいたま法務局とのこれまでの質問、回答についても掲載されています。参考にして下さい。

 

 

記2 2020.11.5 13:34 法務省回答

 

白崎 淳一郎 様

 

本年10月18日付けのメールを拝見しました。

別紙のとおり回答します。

 

法務省

 

別紙

 

1~4について

御理解のとおり,理事会設置一般社団法人以外の一般社団法人においては,社員総会は,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般社団・財団法人法」といいます。)に規定する事項及び一般社団法人の組織,運営,管理その他一般社団法人に関する一切の事項について決議をすることができることとされています(同法第35条第1項)。

そして,一般社団法人の理事の任期は,選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとすることとされていますが(一般社団・財団法人法第66条本文),定款又は社員総会の決議によって,その任期を短縮することを妨げないこととされています(同条ただし書)。他方で,定款の定め又は社員総会の決議をもってしても,その任期を伸長することはできないと解されています。

 

5,6について

会社法第332条第2項では,公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)における取締役の任期について,定款によって,選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結の時まで伸長することができると規定されているところ,この規定に基づき,取締役の任期満了前に,取締役の任期を伸長する旨の定款変更の決議を行うことにより,当該取締役の任期は変更後の任期の満了時まで伸長することができると考えられます。このとき,当該取締役に関する変更登記は,変更後の任期の満了後に行うことになりますので,変更前の任期満了時に「任期延長」という登記の必要はないものと考えられます。

 

7について

上記の回答のとおり,一般社団法人の理事の任期については,法律に定める期間を超えて伸長することはできないと解されていますので,当省ホームページのQ&Aを見直す必要があるとは考えておりません。

 

8,9について

一般社団法人の理事の任期について,会社法第332条第2項のような定款による任期の伸長規定が置かれていない理由について,平成17年12月から実施された「公益法人制度改革(新制度の概要)に関する意見の募集」に対するパブリックコメントにおいて,伸長規定を設けることに反対の意見が圧倒的であったことを挙げる文献があります(新公益法人制度研究会『一問一答公益法人関連三法』(商事法務)57頁)。

また,御理解のとおり,一般社団・財団法人法において,休眠一般社団法人とは,一般社団法人であって,当該一般社団法人に関する登記が最後にあった日から5年を経過したものをいうこととされている(同法第149条第1項)のに対し,会社法においては,休眠会社とは,株式会社であって,当該株式会社に関する登記が最後にあった日から12年を経過したものをいうこととされています(同法第472条第1項)。会社法において,期間が12年とされているのは、公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)において,定款によって,取締役の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結の時まで伸長することができることとされていることによるものと考えられます(同法第332条第2項)。

これらの一般社団法人に関する規律等について,現時点において,直ちに見直す必要があるとは考えておりません。

 

10,11について

上記の回答のとおり,一般社団法人の理事の任期については,法律に定める期間を超えて伸長することはできないと解されていますので,理事の選任に関する法人の構成員の意思を示す観点からも,任期満了退任後,同じ者が引き続き就任(再任)した場合であっても,変更の登記をする必要があると考えております(一般社団・財団法人法第303条)。

 

 

記3 2020.11.11 法務省回答に対する再質問

 

FAX 送付状

 2020年10月18日付けの私メールに対して、2020年11月5日に回答メールをいただきました。有り難うございます。

 しかしながら、回答は曖昧で、私の質問にしっかりと答えてくれませんでした。そこで本日改めて再質問させていただきます。丁寧な回答をお願い致します。

 なおこれらは白﨑淳一郎のブログで公開しています。

 

追伸 回答8,9に記載されている「一問一答公益法人関連三法」(商事法務)の57頁について、そのコピーをメール回答に添付していただきたいと思います。厚かましいお願いですが伏してお願い致します。

 

2020.11.5の法務省の回答に対する再質問(2020.11.11)

 

1.回答1~4について

  回答では1~4をひっくるめてまとめて回答していますが、10月18日の質問1~4はそれぞれ違います。真摯に国民の疑問に答えて下さい。

  そこで改めてお伺いします。

① 質問1は、定時社員総会で任期の延長を決議することは、違法かどうかを聞いています。違法ならその理由と根拠条文を示せ、としているのに、なぜ明快に答えないのですか。明快に答えて下さい。

② 回答では一般社団法人及び一般社団法人に関する法律(以下「法律」という。)第35条第1項によれば、「法律に規定する事項及び一般社団法人の組織,運営,管理その他一般社団法人に関する一切の事項について決議をすることができることとされています。」とありますが、その後、後段部分で「定款の定め又は社員総会の決議をもってしても、その任期を伸長することはできないと解されています。」とも回答しています。

  「解されている」、という回答からは、必ずしも法律で伸長できないとは明確に規定されていない、単なる内部だけの取扱い・解釈である、と判断できますがそれで良いですか。

  それとも「伸長することはできないと解される」とする根拠となる法令はありますか。あるいは社員総会の決議でも任期の伸長は決議できない、ということについて、内部通達や内部の解釈例規ではなく学説、論文はありますか。あったら教えて下さい。

  明確に否定、禁止する規定がない限り、原則は任期の延長(伸長)も決議できると判断されますが、反証があるなら、明快に納得いくよう説明して下さい。

  なおその際、会社法第332条第2項が株主総会の決議により定款で任期を延長できると規定しています。定款を制定・変更するのは株主総会や社員総会の権限です。このことも含めてお答え下さい。

③ 前段の回答にある「一切の事項」になぜ任期の伸長が含まれないと解されるのですか。一切というのは広辞苑によれば「残らず。全体。すっかり。ことごとく。」と記載されています。大辞林でも「全部。すべて。残らず。」との説明がなされています。つまり公序良俗に反しない限り、法令で禁止されていない限り、何でも決議できる。決議に例外はないという意味ではないのですか。

  繰り返しますが、どうして社員総会の決議に任期の延長が含まれないのですか。前述したとおり会社法第332条第2項からは、できると規定していますが如何でしょうか。

④ このことに関し、回答5,6では、会社法第332条第2項では「取締役の任期満了前に、取り締まりの任期を伸長する旨の定款変更の決議を行うことにより」と任期の伸長ができる旨述べています。どうして会社法株主総会ができて、法律の社員総会ではできないのですか。

⑤ 10月18日の質問2では、例えば任期2年のところ任期途中の1年目で、改めてさらに2年延長する場合、違法か。違法ならその根拠条文と理由を述べて欲しい、というものでしたが、どうしてこれに明快に答えられないのですか。回答の5,6の会社法との関係も含めて答えて下さい。

⑥ 10月18日の質問3は、社員総会「終結の時」についてどう考えるかということを聞いています。もう少し具体的に言えば、任期の満了は社員総会開催の日なのか、議長が総会終結の宣言をした以降なのか、ということです。

  「終結の時」とは、一般的には条文上は、議長が終結宣言をした後と判断されます。異議があれば明確に反論して下さい。社員総会開催中はまだ任期は満了していませんね。

  一般的には、役員の変更がない場合は、その社員総会終結前に役員の任期の延長もしくは再任が行われます。まさか、社員総会終了後時間的間隔を置かずに同じメンバーで再度社員総会を開催して、改めて役員の選任(再任)を行うことは滅多にあり得ないことです。

  つまり、役員の任期延長や再任を定時社員総会中に行えば、まだ任期が終了(満了)していないうちですので、その時に行ったのなら、Q&Aに記載されている、「任期満了により退任」という状態にはなっていないうちに再任されるということですね。これは任期の延長であり、なんら法律に触れるものではないのではないかと言うことを聞いているのです。

  Q&Aにいう、た「任期満了により退任」というのは、定時社員総会終結後に再任した場合だと考えられますが、経過と日本語をしっかり見て判断していただきたいのです。

⑦.10月18日の質問4では、廃止された商法第256条の任期と会社法や法律の役員の任期の規定の仕方を示し、思想が変わったのではないかと問ました。これについて改めて回答して下さい。

いいかえれば役員の任期は商法時代の「法定2年」から、会社法や法律の「2年以内に終了する定時社員総会の終結時まで」、と法定から定時社員総会までと企業自治、ガバナンスを認める趣旨にかわった、ということでよろしいですね。

思想が変わったのではないかという私の意見について、コメント下さい。

⑧ 10月18日の質問2に記載されている具体例について補足して述べます。

  これは弊社のことでした。弊社は2020年2月26日付けで.さいたま地方裁判所越谷支部から、「上記の者を過料30,000円に処する。」。

理由「上記の者は、上記法人の代表理事に就任していたところ、役員が退任し、法定の員数を欠くに至ったのに、令和元年12月10日までにその選任手続を怠った。」。

適条「法律第149条第1項、203条第1項、非訴事件手続法第120条、第122条」というものでした。

  さっそく「適条が第149条第1項とあるがこの条文は法律342条の各号にある過料に処すべき行為に該当しない。理事は毎年の社員総会で任期延長を行っており欠員もなければ役員選任懈怠もない」との異議申立を行い、さらに審尋も行い、2020年8月19日付けで、

主文「本件につき当裁判所が令和2年2月26日にした過料決定を取り消す。本件は 罰しない。」。という決定がありました。

理由「一件記録及び審尋の全趣旨によれば、申立人は、平成24年4月12日の本件法人設立時に本件法人の理事及び代表理事に就任したが、その後、理事の任期満了前に、社員総会において同人について理事再任の手続が行われたことが認められ、本件の役員選任義務懈怠の事実は認められない。したがって、本件について、申立人を不処罰とするのが相当である。」

  ということで、役員選任後2年以内の定時社員総会終結時の任期を、1年目の定時社員総会で任期の延長をし、翌年以降も同様の手続で任期の延長を繰り返しおこなったことについて、裁判所は役員選任義務懈怠の事実は認められない、と認定したのです。

  この決定を法務省はどう受け取りますか。論評なり感想をお願いします。なお、この審尋には法務省代理人である検察官検事は「然るべく」という意見を述べています。決定に対して検察官は即時抗告をしませんでした。

  社員総会終結時までに役員任期の延長を社員総会で決議すれば役員の任期は最長2年では終了しないことを裁判所が認めたのです。

今後は、この裁判所の決定どおり(社員総会終結前に任期の伸長をすれば役員選任懈怠はない。任期の伸長のため重任とはならず、従って変更登記も必要ない)という行政運営をしますか。しない場合はその理由と根拠を示して下さい。裁判所の決定に沿ったQ&Aを見直して下さい。

 

2.回答5,6について。

① この回答からすると、会社法では株主総会で任期満了前に定款の変更決議を行えば変更後の任期満了まで伸長できる。このことは例えば、もともと10年の任期である役員が、選任後9年目に株主総会で役員の任期を本日からさらに10年間延長すると定款変更すれば、当初の10年以内という制限(上限)を超えて新たに定款で定めた期間(合計19年)まで延長しても差し支えないということですね。

② このことは会社法第332条第2項の「最終のものに関する定時株主総会終結の時まで伸長することを妨げない。」とう文言があるからですか。

言い換えれば、法律第66条には「妨げない」という文言がないので伸長できないとするのですか。

「妨げない」とは、その規定が設けられたことで疑義が生じそうな問題に関して、ある規定や制度が依然としてはたらいていることを明確にする、ことであると一般に説明されています。この場合どういう疑義が生ずるかは分かりませんが、「妨げない」ではなく「伸長することができる」と規定していたとしても、実態は、伸長してもしなくても良いという意味で使用されているので、「妨げない」と規定している意味はそれほどないと考えます。

で質問をまとめます。質問1②③にも関係しますが、社員総会で定款の変更を行えば役員の任期は改めて2年間は伸長できる、と理解して差し支えありませんね。

  しかも回答5,6のとおり、任期の伸長(延長)の場合は登記の必要がない。ということは重任登記の問題も生じない、こう理解して差し支えないですね。

   私は、この回答5,6は非常に重要で、「任期の伸長には変更登記が必要ない」ということを大いに宣伝したいと考えています。

 

3.回答7について

  回答では「法律で定める期間」と記載されていますが商法第256条は廃止されています。「法律」ではなく、あくまでも「2年以内毎に開催される社員総会終結時まで」です。企業ガバナンスを認めているのです。その考え方は会社法第332条第2項も同じです。違いますか。   

ところが地方法務局の実務を行っている人達が、任期は「法律で2年」と大声で主張しています。「法律で2年」という用語の使用は不正確ですので、今後の是正、指導をお願いします。

ところで回答の5,6で会社法では任期は任期途中で伸長できるのに、一般社団法人はそれができないというのなら、その理由と説明を明確にして下さい。法律第66条に会社法第332条2項のような規定がないからだ、という回答なら、なぜ改正しないのか、規制緩和がうたわれている今日、明快に説明して下さい。

 

4.回答8,9について

  回答では平成19年7月10日のパブリックコメント(以下「パブコメ」という。)で伸長規定を設けることについて反対の意見が圧倒的であったという文献があるので、会社法第332条第2項のような規定を設けなかった、としています。

  まずパブリックコメント制度(意見公募手続制度)とは、「国の行政機関は、政策を実施していくうえで、さまざまな政令や省令などを定めます。これら政令や省令等を決めようとする際に、あらかじめその案を公表し、広く国民の皆様から意見、情報を募集する手続が、パブリックコメント制度(意見公募手続)です。」という説明が、国の機関であるe―Gov(電子政府の総合窓口)でなされています。

  重要なのは「政令や省令等を決めようとする際に、あらかじめその案を公表して」とあります。しかし私がインターネットで調べたところ、この平成19年7月10日のパブコメは、既に平成18年法律第148号として制定、成立施行されている一般社団法人及び一般財団法人に関する法律に対して、具体的に第66条の理事の任期を伸長すべきかどうかを聞いていません。公益法人制度改革関連三法に係わって、単に法律全体に対しての意見でした。また主な意見の一覧表にも法律第66条に関する意見は見当たりませんでした。探し方が悪いのならプリントアウトして回答メールに添付して下し下さい。

  当たり前ですが、パブコメとは、具体的に変更、改正したい箇所を示して意見を聴きます。まだ法改正等がなされていない段階で、閣法として法案提出前に法制審議会などで審議する際に役立てるものです。法律が制定・施行されてからわずか2年以内に法律全体をパブコメして何の意味があるのですか。

  しかもこのパブコメは。公益法人制度改革関連三法に係わるものであり、任期の伸長や、休眠期間の変更などにかかる法律の条文を直接変更するものではなかったのではないですか。問われもしなければコメントしようもあるはずがありません。

  「一問一答公益法人関連三法」という書籍は読んではいませんが、仮に反対の意見が圧倒的だった、と記載されていても、公益法人関連三法に関係するものであり、法律の該当条項についてのパブコメでない以上、任期の伸長、休眠期間の伸長をしないことについての強力な援護説明とはなりません。

  改めて、申し入れます。法律の第66条や第149条について、会社法第332条第2項、会社法第472条のように伸長することについてパブコメをしませんか。菅内閣も旧弊を打破する。できるだけ簡素な行政をと規制漢和を国会で答弁しているではありませんか。

 

5.回答10,11について

① 私は質問10では何故商取引の安全を阻害するような、重任登記が必要か、と聞いているのです。また法律第75条には重任登記をしなかったことから生ずる法律上での欠員は含まれないのではないか、と聞いているのです。

  国会の政府答弁のように聞いたことに答えないつもりですか。はぐらかすのですか。

  回答5,6にあるとおり、任期の延長(伸長)の場合は変更登記は必要ないので、改めて質問10に答えて下さい。

② 質問11は、コロナ禍の中で苦しんでいる中小零細企業のことを考えれば、社員総会終結前に、つまり任期が満了する前に、理事の再任(任期の延長)が決議されたら、回答5,6のとおり、変更登記は必要ないということを認め、Q&Aを見直しませんか。

 

6.さらに言えば、休眠法人整理作業と称して、整理作業とは直接関係ない、登記簿と法律第149条に基づく届出だけで、言い換えれば、社員総会で理事の選任を正当に行っているかどうかを確かめないまま、「欠員状態にある、登記懈怠である」、と一方的に判断して、裁判所に商業登記規則第118条による通知はやめるよう要求します。

 

2020.11.12  白﨑淳一郎のブログ