トリチウム処理水のパブリックコメントに意見を提出しました

 

経産省 資源エネルギー庁 廃炉・汚染水対策チームが2020年6月15日までに、ALPUS処理水の取扱いに係るパブリックコメントを求めているので、2020年5月19日、「希釈ではなく濃縮するという発想の転換を」という意見書をメールで行いました。おそらく今回のパブリックコメントが国民の最後の意見を述べる場となりそうです。以下意見書の内容です。

 

「希釈ではなく濃縮するという発想の転換を」

 

 小委員会報告書もTEPCO処分案のいずれも、ALPS処理水を希釈して海中投棄あるいは水蒸気放出等の処分を考えている。しかしどんなに希釈してもトリチウムの絶対量は変わらない。このまま投棄すれば必ずや風評被害が起こり、反日種族主義の韓国から国際的な非難、揶揄を浴びせられるであろう。むしろ発想を転換して、希釈ではなく濃縮することを考えたらどうか。

 いうまでもなく、通常の水(軽水H2O)を電気分解しても電気分解しきれない水が残る。これが重水(D2O)である。この重水は核分裂の減速材としても利用されている。減速の過程で核分裂による中性子により重水は三重水(トリチウム水T2O)に変化する。これは日本の軽水を使用した軽水炉でも、メルトダウンしたデブリによってもトリチウムは発生する。そしていくら電気分解しても重水(T2O)やトリチウム水(T2O)は電気分解できない。

 では、現在ALPS処理水に含まれている重水やトリチウム水の絶対量はどれくらいであろうか。重水の量は発表されていないが、2020年3月12日現在、トリチウム総量は約860兆ベクレル、純トリチウム水換算では約16グラムと試算され発表されている。これは979基ある119万㎥というタンクの総量に比べて限りなく少ない量である。言い換えればタンク内のALPS処理水の大部分(99%)は軽水(H2O)であるということを意味している。

 この大部分の軽水を電気分解し水素と酸素に分離除去し、電気分解しない重水とトリチウム水を残すのである。要するにALPS処理水を希釈ではなく濃縮するのである。電気分解するにはどの程度の電力や時間を必要とするか、溶解液として5%水酸化ナトリウムが良いのか10%炭酸ナトリウムが良いのかあるいはそれ以外の物質が良いのか、電極として白金が良いのか、塩素の発生も考えられるのでこれらの処理方法等の実証実験をする必要があるが、同時に水素社会を目指す取組として液体水素化、液体酸素化や水素とトルエンの化学反応によるメチルシクロヘキサン(MCH)生成などとセットで考察する必要がある。

 また電気分解を効率的に行うには、軽水の量が一定程度分解されると電気分解の処理能力が遅くなるので、これら処理能力の劣った水を遠心分離してさらに軽水部分だけを取り出し、再電気分解する等のことも考えなければならないであろう。

 そして電気分解されなかった濃縮された重水(D2O)とトリチウム水(T2O)の絶対量は重水の量が不明だとしても、どう見積もっても現在の969基の1割以下となるはずである(というよりも1割以下になるまで電気分解と遠心分離を繰り返すのである)。

電気分解と液体水素化、液体酸素化、MCH化を行うには相当の電圧と電流が必要である。が、2019年11月から開始された固定価格買取制度(FIT)の廃止を止め、全量を廃止前の価格で新たに国(電力会社も相応の負担を行って)が税金で買い上げて使用するとか、原子力発電の再稼働の条件として全国の原発から一定量の電力を供給する等の体制を組めば解決すると思われる。

 もう一つこの濃縮されたD2O・T2O水は中性子に対しては化学的に非常に安定していることである。つまり現在使用済み核燃料や高濃度核汚染廃棄物質は硬化ガラス等に封入して地下等に貯蔵している国もあるが、その容器にこのD2O・T2O水を混入することで中性子等によるガラス容器の劣化を遅らせることが可能だと思われる。いずれにしろこの濃縮されたD2O・T2O汚染水は絶対量が少なくなるため保管方法もそれほど難しくない。

 私は、保管も一つの方法であるが、この濃縮D2O・T2O水に使用済み核燃料や高度核汚染物質、あるいは廃炉作業で出てくる高濃度汚染物質やデブリ等を混ぜて、例えばH2Aロケットに積み込み太陽に向けて打ち上げることを提案したい。太陽は水爆の核分裂をしている星である。地球上の各国で発生した核汚染物質を全て投棄してもほとんど問題はないと思われる。打ち上げる技術と費用は片道であり途中で太陽の引力を使用するのでそれほど難しくないし費用も膨大とはならないと思われる(小委員会報告書では海洋投棄で34億円、空中投棄で1千億円との試算があるがあまり信用できない。)。

むしろ核汚染物質やD2O・T2O水の廃棄処理業務を国際的に請け負うことで新たなビジネスチャンスともなり得る。また電気分解で生成した 水素と酸素はロケットエンジンの燃料とすることもできる。

 少なくとも、核汚染廃棄物質の最終処分場、核汚染廃棄物保管場所探しに苦慮するくらいなら、ロケットによる太陽への投棄は非常に現実的であり安全でありかつ費用もそれ程膨大ではないと考えられる。

 なお、私は原発の再稼働には必ずしも賛成ではないが、もし稼働させるなら一定の電力をこのALPS処理水の濃縮の電気分解等のために使用することと、温排水を使用した二酸化炭素の抽出・回収を再稼働の条件の一つに加えて頂きたいと考えている。(詳細は2020.1.4、2.16の「温排水の利用で地球温暖化対策を」と2020.1.8「福島第1原発トリチウム汚染水は太陽に送れ」等の白﨑淳一郎のBLOGを参照のこと。)

 最後に、私は必ずしも電気分解だけが唯一の濃縮方法ではないとも考えている。問題は希釈するより濃縮し絶対量を少なくする方が貯蔵や保管等の取扱いが容易になるということを言いたいのである。従って、濃縮できない理由を考えるのではなく、どうしたら濃縮できるのかを探ることに努力を傾注すべきと考える。

 言うまでもなく濃縮されたD2O・T2O水には大量の重水(D2O)が含まれていると考えられる。この重水は将来の新しいエネルギー技術である常温での核融合炉の燃料としても注目されている。核融合炉の是非も含めて取りあえず希釈による投棄は再考すべきではなかろうか。

 

2020.5.20  白﨑淳一郎のblog