海水から二酸化炭素を取り出し、太陽に送れ

海水から二酸化炭素を取り出し、太陽に送れ


 前回(2019.9.30)の白崎淳一郎のblog「福島第1原発 トリチウム汚染水は太陽に送れ」は、結構反応がありました。お礼申し上げます。
 さて今回は、台風19号のことから、若干考えてみました。まずは、台風に被害のあわれた皆様に、お見舞い申し上げます。
 確かに、台風が年々大型化し、15号もそうでしたが、甚大な被害を与えるようになりました。地上に生きるものにとって困ったものである。しかし、立場を変えて、地球という観点に立って観ると、温暖化を止めるため、海水中の二酸化炭素を空中に吐き出し、かつ雨と風で地表を冷やそうという台風を起こす作業は、自助作業であるとも言えなくはありません。地球も苦しんでいると思われる。

 温暖化の問題は、空気中だけでなく海水中にもたくさんの二酸化炭素が含まれ、それが海水温度を上げ、台風を大型化させているという事実を、人類共通の認識とすることが大事だということである。トランプ大統領も認めるべきである。
 パリ協定では、今後排出するCO2ガスをどう減らしていくのかを決めたのであるが、現在大気中にあるCO2ガスの削減については、具体的に決めていない。

 ところで、現在あるCO2削減方法を文献(ネット)で見てみると、①海に吸収させる。理論的には年間470億トンの二酸化炭素を固定化することが可能。②地球化学(岩石などに吸収固定)で年間で900億トン~9000億トンの二酸化炭素を吸着できる。③酵素を使う。微生物を用いない酵素で、例えばリブロース 1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシナーゼなどが考えられるが、非効率的でありそこに難があると指摘されている。④砂漠を緑化する。面積1k㎡のオアシスを450万箇所作ることで410億トンの二酸化炭素を植物が吸収することが出来る、という説である。これはベンチャーキャピタル・Y・コンビネータが発表した4つの技術であり、この技術を実現できるスタートアップを募っているそうである。それ以外にも、触媒技術を活用した「人工光合成」があるが、これは工場や火力発電所など現に二酸化炭素を排出している工場等に設置して、CO2と水を原料にしてオレフィンなどプラスチックの原材料を合成する技術であるが、そもそも大気中の二酸化炭素を吸収して人工光合成を行うことを予定していない。

 また、①の海に吸収させるは、更なる海水温度の上昇につながり、ますます大型の台風を引き起こしかねない。藻や海藻に光合成を起こさせるとしているが、海藻もいつか死滅するといずれ二酸化炭素を排出する。それは④の砂漠の緑化も同様である。食物を植えてもCO2は減らないのである(注)。②は、当該岩石を探し、圧力で吸着させるというが、③も含めて対費用効果を考えれば???ではなかろうか。
 これらの説(案)は、大気中の二酸化炭素を減らすという前提に立っているが、ご承知のとおり大気中には窒素(N2)が78.10%、酸素(O2)が20.93%であるが、二酸化炭素はわずか0.03%である。ただし、2018年レベルでは0.041%に上昇しているので、パリ協定では2050年までに0.035%(350ppm)にしようと決めたのである。しかし窒素や酸素に比べ含有割合が少ない二酸化炭素を、100ppmほど減らすのはかなり効率が悪いので、現在のところ前記方法が提唱されているのであるが、実用化されていないのである。

 ところで、二酸化炭素は水に大変よく溶けることは、中学の理科でも習っているところである。そして現に海水中に大量に溶け込んでいる。海水中の二酸化炭素は、海洋表層だけで大気中の二酸化炭素の約1.4倍の量が含まれているという試算があり、この量は、大気中の二酸化炭素が増加するとそれに比例して溶解する量も増える。その意味では前記①の説も首肯できるのであるが、大気温度が上昇や嵐等での空気の撹拌があると逆に海水から大気中に二酸化炭素が放出される。これが台風時に生じている現象でもある。

 ここで重要なことは、この性質を利用することである。つまり海水を例えば25mプール程度の屋根付き容器に引き入み、大気圧より低め(負圧)にし、さらに40度程度に加温しながら、巨大な泡立て機(ハンドミキサーの大きなもの)のようなもので海水を撹拌するのである(気体は温度が低く圧力が高ければ液体に溶け込みやすいので、その逆を行う)。海水の撹拌方法には、振動板あるいは低中周波振動法なども考えられる。要するにプロ野球の優勝セレモニーでビールかけを行うが、ビールを温め瓶をよく振ることで、泡が勢いよく吹き出るのと同じ要領である。

 容器の天井部分はなるべく低くし溜まった泡(海水には不純物が含まれているので泡が出る)が簡単にはじけるよう、中段部分で機械的にワイヤー等を動かして泡を壊すのである。泡が壊れて生じた二酸化炭素入りの空気を今度は縦型のタンクにゆっくりと導くのである。タンクの上部と下部に弁をもうけ、二酸化炭素入りの空気をこのタンクに貯めるのである。その際は上部の弁は開いておく(下部の弁は閉じておく)。二酸化炭素は酸素や窒素より重いので二酸化炭素が溜まっていけば、上部の弁から水素、酸素、窒素が自然に抜け出していく。
 つまり、タンクの3分の2以上に二酸化炭素が充満したら(吹きこぼれると危険である。センサーがあればほぼ満タンまで貯められる)、下部の弁から二酸化炭素を取り出し、130気圧程度圧縮すれば液体となる。これを再度気化させればドライアイスができる。

 液体二酸化炭素であれドライアイスであれその後の処理方法は非常に楽である。1案としてはドライアイスにして宇宙ステーションに運び遠心力(推進力は液体二酸化炭素の気化による)で太陽に向けて発射する。多くの彗星が大きなドライアイスなので、太陽に向けて発射してもさして問題とはならないと思う。第2案として液体二酸化炭素ロケットエンジンの推進力に使い、ロケットにドライアイスを積んで月のクレーターに運ぶのである。クレーター内を二酸化炭素で充満させて場合温室効果でどのようなことが起こるか実験するという案である。それから、前述した触媒を使って、酸素と炭素に分離させたりすることもできよう。その他いろいろな使用、利用方法が考えられる。

 ここで、一応海水中の二酸化炭素の取り出しと処理方法の話しは終わるが、この構想には次のようなことも考えられる。二酸化炭素濃度が低くなった、プールに入っている海水の処理である。そのまま海に戻しても良いが、この海水を電気分解すると水素と酸素が発生する。つまり水分が少ない濃い海水が残る。この海水を電気分解で生じた水素と酸素を燃料にして煮沸すれば塩が生成される。また燃料として使用した水素と酸素から純水に近い水も精製できる。

 以上の設備の稼働には、当然相当の電力が必要である。太陽光発電風力発電等の再生可能エネルギーだけで不足の場合、火力発電所から発電量の1割程度を負担させる(二酸化炭素処理を行わない発電所は2割程度)ことを政策や法令で定めることも必要であろう。
 トリチュウムの場合は日本の原発が負担するとしたが、二酸化炭素は全国民が電気を享受しているので、全国民が税金で負担する、というのもありと思われる。

 そしてより重要なのは、海水からの二酸化炭素の分離は、全世界各国が取り組まなければ意味がないし膨大な海水に対処できない。新たなパリ協定を策定し、海のない国も電気や化石燃料を使用している限り、地球温暖化対策のため応分の負担をすべきであると考える。

 私は物理・科学の専門家ではないので、本ブログを参考に識者がさらにこの案を発展させて頂くことを祈念する。トリチウムの件もよろしくお願いする。

(注)「種子が育って樹木になり、それが枯れて土に戻る。これを植物の一生だとすれば、植物が一生の間に放出する酸素の量と吸収する酸素の量は(あるいは吸収する二酸化炭素の量と放出する二酸化炭素の量は)、じつは同じになるのだ。……中略……植物が生長していくにつれて、光合成によって二酸化炭素は分解され、出てきた炭素は植物体に取り込まれる。そして生長が泊まれば、CO2⇔O2+Cと光合成と呼吸が釣り合う。そして枯れて分解されれば、全てが左辺に戻るので、もとの木阿弥になる。結局、植物を植えても、酸素が増えたり二酸化炭素が減ったりするのは、一時的なもので、植物が枯れれば、大気中の酸素も二酸化炭素ももとの量に戻ってしまうのだ。」(身近な問題を「地球スケール」で考える  更科 功 より)

2019年10月20日 白崎淳一郎 ブログ