過料決定取り消し後の若干の事実経過報告

過料決定取消後の若干の事実経過報告

 

8月19日付けで、過料決定の取消があったことは前回ブログ「やりました。過料決定取消。全面勝利」(2020.8.20)で報告しましたが、その後、裁判所の担当書記官、資料閲覧、担当登記官との応答がありました。取りあえず、コメント抜きで事実経過を報告します。(文責 筆者)

 

1.裁判所担当書記官に対する質問と回答 (2020.8.21)

 

質問1.本件決定は、2年以内の社員総会で適正に選任されていれば、いわゆる「重任登記」は必要ない、ということで解釈してよろしいか。その場合、法務省(法務局)も同様の見解か。

 

回答⇒本件決定は「重任登記」の当否は判断していない。決定理由書に書いてあるとおり、役員選任について懈怠がなかったので、不処罰としただけである。本件異議申立の認容に関する決定通知書の写しは、さいたま地方検察庁越谷支部に送付してある。さいたま地方法務局には検察庁から連絡していると思うが、本件に関し、さいたま地方法務局が直接意見を述べていないし、意見も聴いていない。あくまでも検察官との対応である。

  当裁判所からは、さいたま地方法務局(登記官)に結果の連絡はしていない。連絡するシステムとなっていない。

  従って、法務局がどのような見解を持っているか分からない。

 

質問2.決定理由の2に「社員総会において同人について理事再任の手続が行われたことが認められ、本件の役員選任義務懈怠の事実は認められない。」と記載されているが、これはいわゆる重任登記をしなかったとしても違法ではない。というか社員総会で再任の選任手続が滞りなく行われれば、あえてその旨の登記(重任登記)は必要ない、ということを意味しているのではないか。

 

回答⇒直接には重任登記が必要か否かを決定は述べていないが、結論としてというか結果としてそういうことであると判断できると思う。役員変更の登記がなされていなくても法人が解散するまでの間、有効に理事の再任が認められた、ということを言っている。

 

質問3.もし社員総会等で2年を超えたとか仮に役員選任に懈怠があったとき、一般社団法人に関する法律第149条第1項項に違反し、過料処分となるのか?

  つまり私の異議申立で主張した第149条第1項は登記を命じた条文でもないし、第342条の過料に処すべき行為にも該当していない、についてであるが、選任懈怠があればこの条項で過料請求をするのか、それとも別の条文で過料請求するのか?

 

回答⇒法律の判断は裁判官がするのでお答えできない。しかし仮に役員選任に懈怠があった、欠員が生じていたというなら、私としては第149条が第342条を受けていないと思われるので別な条文で過料請求すると思うが、裁判官でもなく登記官でもなく、仮定の話では答えられない。社員総会が有効に成立していない場合はどうなるか、実際に事件として扱うときに判断されると思う。

 

質問4.過去にも同様の過料決定の通知をしていたのではないか。

 

回答⇒確かに同種の過料決定はあったが、私の記憶ではこれまで異議申立はなかったと思う。

 

質問5.商業登記規則 の第118条(過料事件の通知)では「登記官は、過料に処せられるべき者があることを職務上知つたときは、遅滞なくその事件を管轄地方裁判所に通知しなければならない。」とある。この規定に基づいて、過料請求があったのか。そのとき一般社団法人に関する法律第149条第1項違反と記載されていたのか。

 

回答⇒登記官から過料に該当する者を発見したとの通知があった。そこには第149条第1項と、違反事項の要旨として「選任懈怠」との記載があったと思う。

 

質問6.検察官の意見を聴いたとあるが、検察官はどのようなことを述べていたのか。反論の内容を教えてもらいたい。

 

回答⇒担当検事の名前は言えないが、このような事件の場合「然るべく」という意見だったと思う。

 

質問7.裁判所としてこの事件を実際はどのように受け止めていたのか?

 

回答⇒ 担当の裁判官が行政事件担当ではなく一般の民事事件担当であったため、一般民事事件が多数あり、コロナ禍もあり、滞ってしまい5ヶ月も係ってしまった。お詫びする。しかしそんな中で裁判官は一生懸命勉強してこの結論に至った。当然上司の決裁というか了解を得ている。

 

質問8非訟事件手続法の第32条(記録の閲覧等)には「当事者又は利害関係を疎明した第三者は、裁判所の許可を得て、裁判所書記官に対し、非訟事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は非訟事件に関する事項の証明書の交付(第百十二条において「記録の閲覧等」という。)を請求することができる。」と規定している。検察官の意見も含めすべて開示して頂けるか?

 

回答⇒よろしいです。印鑑を持参して下さい。

 

 

2.非訴事件訴訟規則第32条による関係書類閲覧

2020年8月24日14時30分頃 記録の閲覧及びスマホによる撮影を行う

 

改めて判明したこと

 

① 本件は令和1年12月17日付けで、さいたま地方法務局登記官Hの名前で発出されている。

   内容は、「過料に処せらるべき事件を発見したので、商業登記規則第118条の法令の規定により通知します。」「一般社団法人法に関する法律第149条第1項」「選任懈怠」法人登記謄本の内容、法人名、法人代表者名

 

 ② 令和2年8月11日に裁判所のT裁判官から「本件について検察官の意見を求める。」との「求意見書」と私の異議申立書(A4、4頁)、審尋書の意見書(A4、16頁)、その他登記簿謄本(A4、6枚)、社員総会議事録(A4、7枚)、その他関係資料等(いずれも写し)、が発出されている。

  翌8月12日、さいたま地方検察庁越谷支部検察官検事Nより、意見「然るべく」に◯印が付けられての回答があった。

 

 (注)検察官の使用する「然るべく」は、「裁判官の判断に従います。判断は裁判所にお任せします。」の意である。

 

 

3.登記官に対する質問

  2020年8月26日16時35分頃、さいたま地方法務局H登記官に電話する。

 

質問1.令和1年12月17日付け日記(過料)第1948号について、過料処分取り消しの決定がさいたま地方裁判所越谷支部で8月19日に行われたが、そのことを知っているか。

 

回答⇒休眠法人整理作業の件だと思いますが、こちらは商業登記規則118条に基づき、過料処分の事案を当該裁判所に通知するだけで、処分結果をもらうことはしていない。知らなくても問題ない。

 

質問2.この通知書には過料に処すべき事件として、一般社団法人法第149条を指摘しているが、過料処分とすべき同法第342条には第149条第1項は規定されていない。法律のプロが適用条文を誤ったのか。

 

回答⇒しばし時間を下さい。改めて調べた上、回答します。

 

質問3.このような過料の通知は、第149条第1項の「事業を廃止していない旨の届出」を行った者のうち、その後登記を行っていない全ての者に対して、それぞれ地方裁判所に通知しているのか。その根拠は何か。条文上は「廃止していない旨の届出をしない場合は2ヶ月で解散した者とみなす。」とだけ規定しており、届出をした者に対する処分等は規定されていないが、登記せよとの規定があるのか?

 

回答⇒あわせて調べた上回答する。

 

 

4.2020年8月27日 10時20分頃 さいたま地方法務局 O登記官より電話

 

 O登記官 一般社団法人法第149条第1項が同法第342条に基づかないというご意見でしたが、第149条第1項には登記が最後にあった日から5年間経過した者は休眠一般法人とみなします。つまり同条は5年に1回の登記を求めています。この登記がなされていないということで、役員の選任が懈怠としている判断し、変更登記を行っていなかったということで過料に処せらるべき者があったとして地方裁判所に通知したものです。

 

  以下、質問は私、回答はO登記官。

 

質問1⇒まず基本的なことですが同法第342条の過料に処すべき行為に、第149条第1項が記載されていませんが、それを認めますか?

 

 回答⇒条文上は確かに第342条には第149条は記載されていませんが、私どもとしては役員の任期が法律上2年なのでこれを過ぎると、解任されたものとみなして、役員変更の登記をしないまま5年以上経過している、役員不在ということを問題にしたのです。

 

質問2⇒第149条の登記が最後にあった日から5年という、ここにいう登記とは何ですか?

 

 回答⇒今申しましたが、役員の任期が2年で切れているので、あらためて選任の登記をして欲しいという旨の登記です。

 

質問3⇒社員総会で正当に再任され任期が延長されたとしてもその旨の登記が必要だと言うことですか?それはいわゆる重任登記が必要だということですね。

 

 回答⇒そうです。役員の任期が2年と定められていますから、社員総会で再任されても法的には任期満了。解任という取扱いになっています。

 

質問4⇒今回の裁判所の決定では、その重任登記をしなくても2年以内に開催される社員総会の終結前に任期の延長を行えば、役員選任の懈怠は生じないと判断しています。言い換えれば、いちいち重任登記はする必要はない、と言っているのです。そもそも役員の任期は2年とどこに規定しているのですか?

 

 回答⇒同法第66条です。裁判所が重任登記は必要ないという判断をしたのですか?

 

質問5厚労省では役所が訴えられたり、役所が訴えたりするとき、訟務官を選任して対応しています。法務局の場合は訟務官のかわりに検察官が訴訟行為を対応します。その

 検察官が「然るべく」という意見を裁判官に述べています。裁判所だけで亡く法務局を代理する検察官もそのように判断しています。裁判の結果は知らないのですか?

 

 回答⇒知りません。通知するだけで結果を報告してもらうシステムにはなっていません。

 

質問6⇒話しは戻りますが、第66条では確かに見出しには(理事の任期)とありますが、なかみは、任期は選任後2年以内に終了する社員総会の終結の時までとする、とあります。社員総会終結前にさらに2年延長すると決議したら、同法第35条により社員総会は一切の事項をについて決議できるので問題はないと私は考えます。また第66条では役員の再任を禁ずる旨の規定もありません。裁判所も2年以内ごとに開催される社員総会で社員総会の終了前に再度選任すればそれで法的には有効として、私の意見を支持しました。登記官の訴訟代理人である検察官も、「然るべく」という意見を述べているので、法務省もこの考え方に同意したと判断されます。役員の任期は2年ではなく、2年以内に開催される社員総会終結時までとしか記載されていません。第66条をしっかりと読んで下さい。

 

 回答⇒持ち帰って検討させて頂きます。先ほど申したとおり、過料請求の通知に対して、回答を求めることは制度上していません。

 

質問7労働基準監督署では労働基準監督官が書類送検すると、起訴か不起訴か、起訴の場合は有罪か否か、量刑はどうなったのか、を検察庁に照会するよう内部通達で定められています。不利益処分である過料処分の通知行って「それで終わり、後は知らない」、では、あまりにも上から目線ではありませんか。国民に対して不利益な処分を科そうとしているのですから最後まで結末は把握すべきです。

  ところで、裁判所は社員総会で法定どおり選任され続けるなら、役員選任について懈怠があったとは認められない、という判断をしました。繰り返しますが再任の都度登記は必要ない、といっているのです。今回の休眠法人整理作業で私と同様たくさんの中小零細企業に過料請求がなされ3万円が徴収されています。私だけが救済されるというのは、憲法第14条の法の下の平等に照らして問題です。法務省としてこの件に関し謝罪し3万円の過料について、利息を含めて返却すべきではありませんか。

  また、重任登記について「今後は必要ない」ということを国民にあきらかにすべきではありませんか。

 

 回答⇒まず裁判資料を手に入れてから、内部で検討の上お答えします。

 

質問8⇒この件は、全法務労働組合本部にも行政民主化運動でとりあげるべきではないかと提案しました。現在のところまだ回答はありません。それから第149条で「事業を廃止していない旨」の届出をした場合のその後の法律的効果、措置すべき事項が条文上記載されていません。またどうしても重任登記をさせたいなら第301条の登記すべき事項にその旨の記載をするとか、登記事項について例えば商業登記は10年、不動産登記は50年とするなど有効期間を設けるとか、法改正を考えてみませんか?私のブログでいろいろ提案しています。

 

 回答⇒いずれも持ち帰って検討させて頂きます。

 

2020.8.27  白﨑淳一郎のBlog